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2012年12月 9日 (日)

編集者仕事しろ

今回ご紹介する本は今年私が見た鉄道関係で一番しょうもない本です。そのつもりで以下お読みください。

「路面電車で広がる鉄の世界 チンチン電車と都市計画がわかる本」小川裕夫著 秀和システム2012年9月刊
A5版300Pを越える堂々たるつくりの本です。
横書きで章立ても専門書っぽく見えます。
路面電車の定義から章を起こし線路と路線、車両、設備、運転と運行、というように工学書のような前半に続き後半は各地の現存路線紹介と新しい路面電車、資料として路線図が巻末に掲載されています。

この著者は路面電車関係本を編、監修含め数冊だしており、雑誌記事も書いていますが、いずれも事実誤認、思い込みや意味不明な文章の羅列で読むに耐えないものばかりでした。
本書も極端にいえば毎ページにミスや意味不明な文章が見られます。
前半はろくな知識が無い者が工学的な事柄を説明しようとするとどうなるかを端的に示しています。
一例をあげると57Pに車両構造を示す図が掲載されていますが、「基本的な車両構造分解すると六面体」という図はGMの板キットかBトレインショーティーの組み立て説明図のように左右側面、両妻板、カマボコ形の屋根、平板一枚の台枠、に「六分割」されています。
著者は台枠がどのような形状をしているのか知らないとしか思えません。
歴史的事実にも疎いようで82Pにはこんな記述があります。
「都電や名古屋市電ではカルダン駆動の新車両がたくさんはしることになったが、ほかの路面電車では、それほどカルダン駆動は普及しなかった。」
文脈から言ってここでいう都電の車両は5500、6500のことでしょうが、たくさんと言える両数なのか?大阪市電3001の立場は・・・これに限らず、廃止された路線についての著者の知識はお寒いかぎりです。
写真もかなり掲載されていますが、著者には順光という概念がないようで、前面がカゲで側面に日が当たっている写真ばかりです、なんで反対側撮らないんだよ?
同じ電車を連写したと思しき写真を次のページに掲載するということも平気でやっています。集電器が切れた写真はあたりまえのようにたくさん掲載しています。
巻末の路線図も豊橋、岡山の分岐方向が逆で掲載されています。
マニア的なツッコミはいくらでもでてきますが、文章もこなれてなく、同じ表現の繰り返しで文字数をかせいでいる部分もあります。
拙い文章の一例として192P「江ノ電のファンの特徴は、鉄道マニアじゃない人が多いことだといわれる。」
ライターを名乗るプロの文章ですよこれ。「じゃない」は無いんじゃない?普通は「マニアではない」と書きますよね?
さらに極めつけは178P都電のバリアフリー化についての記述。
「一説には低床車を導入しても電停を改良しなければならず、そうなると道路の改良も必要となる。土地に余裕のない東京では、電停を嵩上げする方が手間も費用もかからないと判断したから---といわれている。真相のほどはわからないが、全国的にも都電荒川線だけがバリアフリー化において独自の道を歩み始めているのは事実である。」
一説によると、と書きだしておいて真相はわからない、とやられては何だっていえますわなぁ。
著者は都電に低床車が入らないのがお気に召さないようだが、電停嵩上げがいつ行われたのかご存知ないのだろうか。
一説によるとこの「一説」も著者の頭の中での妄想にすぎない、といわれているが真相はわからない。
編集者がまともに仕事していればこんな文章が活字になることないですよね。

ともかくこんな具合に最初から最後まで赤入れたら真っ赤々になってしまう内容で、サブタイトルにある「チンチン電車」のことは多少わかっても「都市計画」についてはこの本読んでもなんの知識は得られません。
文意がわかりにくい文章と著者の脳内理論に付きあわせれてそれでも読み通すことができれば忍耐力はつくと思います。

昨今の鉄道ブームとやらで不況の出版界でも鉄道本は順調との話も聞きます。
それで粗製乱造気味の本も出てくるわけですが、とにかくこの本は酷い。
出版社は直ちに絶版回収して断裁処分するのが一番宜しい対応かと思います。
ちなみに私は図書館で借りてきました、こんなしょうもない本に区民税が使われたと思うと非常に業腹な気分です。

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コメント

未読ですが、文章の問題は編集側の校正の問題であるのは言うまでもありませんし、筆者自身の問題でもありますね。
集電器の切れた写真は、現物を見なくとも酷いとしか言いようがないですね。恐らく大元の写真自体が集電器の切れた状態だったのか、それとも編集側でトリミングされたかのいずれかでしょう。

投稿: X-103 | 2012年12月20日 (木) 21時41分

X-103さん
なによりもこんなもの知らずの著者に書かせた出版社の責任かと。(苦笑
写真はまず間違えなく著者撮影のノートリミングだと思います。
機会があれば立ち読みでもして笑い飛ばしてください、それがこの本の楽しみ方だと思います。

投稿: TADA | 2012年12月20日 (木) 23時47分

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